港湾技術コンサルタンツ協会
会長 柴木秀之
港湾技術コンサルタンツ協会が、平成23年(2011年)10月に、一般社団法人へと改組し、令和3年度で創立10周年の節目を迎えます。
港湾技術コンサルタンツ協会会員を代表して、日頃よりご高配を賜る国土交通省港湾局をはじめ、全国地方整備局等、地方公共団体の皆様に感謝申し上げるとともに、皆様のますますのご盛況をお祝いいたします。
当協会は、30年前の平成3年(1991年)10月に、「港湾計画・設計会」として発足、平成5年(1993年)6月に、「港湾技術コンサルタンツ協会」へと改名し、平成23年(2011年)10月に、「一般社団法人」へ改組し現在に至ります。その間、協会を中核として支えていただいた理事・監事の方々は、81名に及びます。また、地域の活動については、地方担当幹事にご協力をしていただきました。多くの方々に支えられたことに、あらためて感謝いたします。
●協会が掲げる「理念」の継承
(一社)港湾技術コンサルタンツ協会は、港湾・海岸における社会基盤の計画・調査・設計・施工管理・維持管理等の業務を担うコンサルタントにより構成されると定義されます。協会の活動目標は、会員各社が有する優れた技術力の提供を通じて、社会基盤の堅実な整備を行うことにより、我が国の活力ある経済活動を支援し、安定した市民生活を支えることです。そのために、透明性・公共性を念頭に、コンサルタント業の適切な遂行と、社会的な地位向上を目指した活動を行うことを理念としています。この目標と理念は、創立10周年にあたり、今後も変わらず継承します。
●港湾コンサルタンツ協会の課題
◎港湾・海岸事業を維持・発展させるための課題
港湾は、四方を海に開かれた日本において、世界を結ぶ重要な窓口です。港湾を経由する人流・物流は、日本の社会・経済活動を支える重要な拠点です。また、海岸は地域のイベント開催等のにぎわい創出の拠点になっています。
一方、東日本大震災等、激甚化する地震・津波・台風災害に対し、港湾は災害物資や救援要員の輸送拠点としての機能があります。安全・安心の基盤となる港湾・海岸の防災機能の強化は、国土強靭化事業の喫緊の課題です。また、気候変動の適応策として、洋上風力発電の基地港湾整備等は、カーボンニュートラル事業の中核に位置付けられています。
さらに、港湾整備のi-Constraction推進と、それを支える港湾関連データ連携基盤の整備等、港湾のDX推進は、港湾・海岸事業の効率化を支える重要課題です。
これら港湾・海岸事業を維持・発展させるために、全国港湾・海岸の事業ニーズを情報発信し、事業を円滑に進めるための業務支援は、協会の最優先課題です。
◎港湾コンサルタント業種を持続可能にするための課題
協会会員の経営を持続・発展させるためには、次の課題解決が求められます。
①働き方改革への対応、特に、長時間労働、テレワーク推進等の就業環境の改善
②コンサルタント業務の担い手、特に、若手技術者の確保・育成
③高品質な成果の提供と業務の効率的な遂行を両立する生産性向上
これらは、複合的な課題です。コンサルタント業務の就業環境を改善することは、仕事と私生活の両立(ライフワークバランス)を重視する若手の好感度を高め、担い手の確保につながります。また、DX推進により生み出される生産性の向上は、就業環境の改善につながります。CIM/BIM等のコンサルタント技術の品質向上には、DX技術に精通する人材確保が必要です。少子高齢化のもとでの担い手を確保し、働き方改革に対応するための経営資源への投資、競争力を強化するための技術の高度化等を目指します。
●協会の重点施策とその活動
会員会社自身の努力による経営の継続と発展を自助とすると、港湾・海岸事業の創出による業務の安定的な発注は公助になります。
会員各社が培った専門的な技術や知見を活かし、港湾・海岸の社会資本整備を担う国・地方公共団体等、発注機関のパートナーとしての役割を適切に果たせるように、会員各社と国・地方公共団体等との円滑な橋渡しを行うことは共助になります。この共助の活動が協会の重点施策です。
協会の活動は、会員各社から承認を受けた理事会のもと、設置された総務・企画・技術調査・要望活動の4委員会により計画を設定し、実行されます。4委員会は次の活動を分担して行います。
①港湾、海岸関係コンサルタントの健全な発展と技術向上に関する調査研究
②港湾、海岸関係コンサルタントの社会的使命の重要性及び地位向上に関する広報・広聴活動
③災害発生時の港湾・海岸施設の復旧調査・設計等への対応、罹災地の復旧・復興の支援活動
④関係機関への港湾、海岸関係のコンサルタント業務に関する改善要望と提言等
これら活動を通じて、会員各社の経営努力のみではできない課題の解決が重要な役割になります。
●具体的な活動事例
調査研究は、港湾・海岸関係業務の仕様内容と歩掛等の明確化を行うために、「仕様書作成例と積算根拠の手引き」を配布し、今後、新たな業務についても同様の取組みを行います。
広報・広聴活動は、講演会の企画・開催し、会員企業が取り組む業務の品質の向上、担い手の育成の観点から、会員企業の技術向上を支援します。また、プレス発表やホームページを通じて、港湾コンサルタントの地位向上を図ります。
災害対応は、関係機関と締結した「災害時の包括的協定」に基づいて、被災した港湾・海岸施設の復旧支援を行うために、災害関係規定等を制定して役割分担を明確するとともに、大規模防災総合訓練に参加し、災害時に円滑な行動を行う準備を行います。
要望活動は、毎年、国土交通省港湾局、北海道開発局、各地方整備局、沖縄総合事務局等との意見交換会を行い、協会会員の要望を提示することで、関連業務の改善に向けた提言を行います。要望内容は、会員会社へのアンケート調査等により意見を聴取し、要望書としてまとめます。
当協会は、会員各社がこれまでに培った知見や経験、高度の専門性を活かし、港湾・海岸における社会資本整備の一翼を担う国・地方公共団体等のパートナーとしての役割を適切に果たせるよう努めてまいりました。これからも、様々な課題の改善に積極的に取り組み、社会の要請に応えるための業界の推進役となって、次世代にむけて、港湾・海岸関係の社会資本の整備、活性化のために、積極的な活動に取り組みたいと考えております。